研究概要 |
従来の鉛入りはんだに代るべき「新しい無鉛はんだ」を開発することを本研究の究極の目的とする.溶解温度・熱伝導度・電気伝導度・濡れ性・強度・コスト・資源量などを総合的に勘案して,本研究ではSn-X-Y系合金の高温力学特性を重点的に調べる.なお,第2元素XにはAg,Zn,Biを用い,元素Yは別に定める低融点金属を用いる.具体的には,各候補合金について以下の諸点を明らかにする.(1)ジョイントの寿命に及ぼすヒートサイクルの温度差,昇温・降温速度,及び保持時間の影響,(2)ヒートサイクル間の保持時間と寿命の関係,(3)組織変化とくに損傷発生の形態・時期・場所,(4)組織の熱的安定性とくに第2相粒子の粗大化の難易度,(5)クリープ寿命とクリープ速度の温度および応力依存性,構成方程式の決定. 試験片は,Sn-3.5%Ag合金をCuで挟み込んだラップジョイント形状で,接合部にはせん断歪を付加した.接合奏は5mmである.接合はN2ガス雰囲気中533Kで行われた.冷却速度は0.17,5K/sの2種類である.疲労試験は歪制御方式,完全片振式3角対称波で温度298K,歪速度5x10-3/sで行われた. 疲労寿命に関して以下の結果を得た.(1)冷却速度の如何によらず,上記合金の組織は混粒からなり,晶出する化合物相Ag3Snは粒状に均一分布する。(2)冷却速度が増すと母相の結晶粒径及び晶出粒子の平均間隔ともに減少する.(3)最大引張応力は冷却速度に強く依存する.これは本合金の初期組織の差に起因する.
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