本研究では、高速回転レーザスキャナにおいてポリゴンミラーの風損を低減し、モータ駆動電力の減少を図るために、溝付き空気軸受のポンピング効果を利用してハウジング内を真空にする手法を提案した。そしてこれまでの研究をもとに、最適なポンピング特性と支持剛性を持つ真空ポンプ機能付きヘリングボーン溝付き軸受を設計製作し、これらを実際のレーザスキャナモータに組み込んだ。本年度は製作したレーザスキャナモータを用いて高速回転試験を行い、回転軸の振れおよび安定性、容器内圧力の減少過程と最小到達圧力および容器の温度上昇と消費電力の測定を行った。また容器内圧力を大気圧とした従来のレーザスキャナについても高速回転試験を行ない、提案するレーザスキャナとの実験結果の比較を行い、提案したスキャナの有用性を検討した。以上の試験結果より、下記のような結論が得られた。 (1).製作したスキャナは、40000rpmまで安定に回転し、かつ回転振れも十分小さかった。 (2).容器内圧力は、35000rpmで0.1気圧程度まで低下させることができた。 (3).ミラーを35000rpmで回転させる場合の消費動力は、空気中でミラーを回転させた場合に比べ1/3にできることが実験的に明らかになった。また温度上昇についても、空気中回転に比較し、3/5程度まで低下させられることが明らかになった。 以上のことより、提案した省電力型のレーザスキャナは、従来のスキャナに比較し電力消費量を著しく低減できるという点できわめて有用であることを示すことができた。
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