研究概要 |
平成8年度は波動解析ソフトウェアならびに室内での超音波実験を中心として以下のような成果を得ることができた. 1.探触子による入射波動のシミュレーション 試験体に直接当てる接触型探触子と水中での超音波検査に使用する水浸型探触子の両方について探触子からの入射波動を数値シミュレーションした.接触型探触子については圧電素子面での表面力を見出す逆問題として定式化を行い,入射波動をシミュレーションした.水浸型探触子については探触子による波動の送受信を一つのシステム成分と見なした線形システム論に基づく補正法を提案した. 2.実験データを用いた欠陥の可視化 人工欠陥を有するアルミニウム供試体を用いて,水浸超音波実験を行い,散乱波形を収集した.その実験波形に対して平成7年度に開発した逆ボルン近似や逆キルヒホフ近似に基づく線形逆解析法を適用して,欠陥の形状を再現した.その結果,ほぼ予想される欠陥形状が再現できたものの,隣接する欠陥の形状については精度が悪いなど,線形逆解析法の適用限界についても明らかとなった. 3.広域探傷システム用探触子の設計 平成7年度に開発した表面波,板波の伝播,散乱解析のための境界要素プログラム,ならびに,本年度,開発した入射波動のシミュレーションプログラムを用いて,探触子の入射角および周波数と励起される表面波,板波のモードや振幅の関係を明らかにした.ただし,土木構造物で多く用いられるコンクリート材料については減衰や材料非均質性などの影響が予想以上に大きく,使用周波数などに関して更なる検討が必要である.
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