研究概要 |
本研究は,地下空間の中で近年脚光を浴びている大深度地下空間を対象とし,その特質を建築人間工学的見地からとらえて,安全面,特に防災上,より望ましい空間構成を探ることためのシミュレータを開発することを目的としている.本年度は,そのための第1段階として資料の収集,地下空間の人間行動の調査実験,シミュレータのパイロットシステムの開発を行なった. 資料収集に当っては,特に阪神・淡路大震災の直後でもあり,大深度地下空間に関連するものに留まらず震災関連の資料等も幅広く収集することにつとめた.それらを概観すると,一般の建築物においても安全性に多くの問題があったことが明らかであり,それらの建築物以上に安全性が要求される大深度地下空間の構築物の安全性には,より一層の配慮が求められることがわかった. 人間行動の調査実験については,大阪市内の梅田地区地下街を対象として,学生による地下街の認知マップの作成ならびに一般利用者への追跡アンケート調査を実施した.その結果,地下街の歩行者は必ずしも最短経路を歩いているのではなく,その要因としては通路幅,階段の有無,店舗の間口長さ,分岐点での進行方向が考えられることがわかった. パイロットシステムについては,従来から開発してきたシステムが地上に建つ建築物を対象としているのを地下空間へも適用できるように改良し,単純な形態の空間を対象としたシミュレーションによりその適用性を確認した. 以上のように今年度の計画していた内容はおおむね遂行できたと考えられる.引続き来年度以降,本格的なシミュレータ開発に取りかかる予定である.
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