研究概要 |
近年,電子機器の小型化・軽量化に伴い磁石の高エネルギー積化が必要とされ,高い最大エネルギー積の可能性が示唆されているナノコンポジットマグネットが注目されている.そこで,本研究では希土類磁石であるNd-Fe-B系の薄膜磁石の作製を試みている. 平成8年度においては,まず薄膜作製後のアモルファス状態から結晶化に至るまでの熱処理の影響を調査するため,蒸着法で作製した薄膜に対し,種々の熱処理による組織と磁気特性の変化について検討した. 薄膜は基板を石英,蒸着源をタングステンとし,フラッシュ蒸着法により作製された.成膜後の試料に対し,赤外線イメージ炉にて結晶化熱処理を施した.膜の組織および構造にはXRD,SEM-EDX,AESを,磁気測定にはVSMを用いた. 成膜後のNd-Fe-B系薄膜は膜中のB濃度が極めて低くなり,これを熱処理しても原料組成の主相であるNd_2Fe_<14>B化合物は結晶化しない.B濃度低下の原因はBが蒸発源であるタングステンフィラメントと反応するためであり,これはフィラメントのカーボン被覆により制御可能であることがわかった.また,B単相膜をNd-Fe-B膜と積層させて成膜した後に熱処理することで,準安定相でB量の多いNd_3Fe_<62>B_<14>相が結晶化することがわかった.この相はより高温の熱処理によりNd_2Fe_<14>B相とα-Feに相変化するものと考えられる.
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