研究概要 |
高温構造材料には,高い性能の信頼性が要求される.しかし,その性能を高い精度で推定できる手法は十分には確立されていない.本研究では,高温クリープデータの定式化および外挿に関する問題点を解決し,高温材料設計・評価システムへ発展させることを目的として研究を行い,次の成果を得た. 1.設計・評価システム概念の高度化:余寿命評価という観点から,次の簡便なΩ法と呼ばれるクリープ構成式が注目されている. ε=-(1/Ω) ln (1-ε^^・_0Ωt) ε:ひずみ,t:時間 (1) ここで,Ωとε^^・_0は材料定数である.この式は,クリープ曲線の後半の3次クリープ域を再現できるが,余寿命評価で問題になる1次および2次クリープ域には適用できない.本研究では,(1)式を改良した次式を提案した. ε=(1/Ω){ln (1+ζt)-ln (1-ηt)} (2) ここで,ζとηは材料定数である.そして,この式を使うと,より早期からより高精度で余寿命が評価できることを明らかにした. 2.外挿手法の適正化:長時間挙動の評価では,高温あるいは高応力での短時間試験に基づいて,長時間挙動を評価しなければならない.2.25Cr-1Mo鋼の長時間クリープデータを用いて検討し,次のことを明らかにした.高温での試験は,低温・長時間で起きることを正しく再現できる.しかし,高応力での試験は,適切な情報を与えないことがある.それは,非熱的降伏応力以上の応力域では,低応力とは違って,応力負荷時に塑性変形するためである.これらの成果に基づいて,2.25Cr-1Mo鋼のクリープ機構領域図を提案した.
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