研究課題/領域番号 |
07555656
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研究種目 |
試験研究(B)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
岸尾 光二 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助教授 (50143392)
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研究分担者 |
佐藤 謙一 住友電気工業, 大阪研究所, 研究部長
下山 淳一 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助手 (20251366)
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キーワード | 酸化物超伝導体 / 水銀系超伝導体 / 材料化 / 超伝導線材 / 臨界電流密度 / 磁束ピニング特性 / シース・テープ材 / プロセッシング |
研究概要 |
一昨年(1993年)に発見された水銀系酸化物HgBa_2Ca_<n-1>Cu_nO_yは、従来知られている物質の中で最も高い臨界温度を示す超伝導体であることが確認されたが、合成プロセスの困難さ、化学的不安定性、弱い磁束ピニング特性などのために実用材料としての可能性は低いと考えられてきた。しかしながら、Reなどの遷移金属元素の添加が、本系化合物の構造的・化学的安定化に有効であることが本申請者らにより見いだされ、注目を集めている。本研究では、このような改質剤を添加した水銀系超伝導体が実用材料として使用できるかどうかに関してのフィージビリティスタディを行うことを目的とした。 まず、組成制御による安定化と超伝導特性の向上を目指してさらに新規化学組成を有するHg系超伝導体および関連物質の探索を続けた。Cr、Mo、Ruなども系の安定化に有効であったが、Re添加が最も良質の単一相試料を与えることが明らかになった。そこで、まずRe添加系に絞り結晶構造解析を通じて安定化機構を調べた。粉末中性子線回折を行ったところ、ReはHgO面内のHsサイト上にReO_6八面体として置換し上下層の結合を強めることによって構造安定化に寄与することがわかった。また同時にc軸(積層)方向の電気伝導を高め異方性の減少に寄与しているものと思われる。磁化ヒステリシス曲線の測定により磁束ピニング特性を評価したところ、Re添加系では臨界電流密度、不可逆磁界などが大幅に改善され、液体窒素温度77KにおいてはY系を越えるポテンシャルを有することが示唆された。 酸化物超伝導体を実用材料として用いるにはシースあるいはテープ線材の形状にプロセッシングする必要があるため、酸化物自身の研究と平行して、金属シース材料の探索も開始した。このため、銀、金、銅などの一般的なシース材との化学的な反応性をまず評価した。それぞれの金属チューブ内にHg系試料粉を充填し各種温度で熱処理後、超伝導体/シース材界面における反応を、光学顕微鏡、EPMA、X線回折などの分析手段により、観察・評価した。この中では金が最も安定ではあったが、酸化物との界面でHgとのアマルガムが生成する事が避けられず、さらに別の金属材料を探索することが必要であると結論された。今後は、Niベース系の合金材料を中心に、Hg系に適したシース・テープ材の候補選定を行うとともに、シース材との適合性の高い超伝導体組成、とくに、改質剤の種類と最適添加組成を決定していく予定である。
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