研究概要 |
本研究ではリサイクルに適した鋼種(エコスティール)の選定基準を示し、具体的科学組成と要求される機械的特性を満足するための製造方法の提案を行うことを目的としている。平成7年度には分離の困難な元素を含まない単純組成合金としてFe-C-Si-Mnを選び、カバーできる機械的特性の範囲を求める方法を検討した。得られた知見は次のようである。 1)単純組成のFe-(0.2,0.4)C-0.05Si-1.5Mn鋼について、熱処理条件を種々変化させた場合の機械的特性(応力-歪曲線,YS,TS,均一伸び,破断伸び)の変化の範囲を、これまでに作成した材質予測のコンピュータプログラムを使って計算した。この計算を通して、任意の単純組成の鋼材について、任意の熱処理を施した場合の機械的特性を計算する方法が確立された。 2)材質を予測するために材料の組織を基準にする場合が多いが、組織の測定精度は機械的性質の測定精度よりもはるかに低く、組織を基準にした機械的性質の予測精度の限界を実験的に明らかにした。 3)材料の強度を決定しているのは組織の自由エネルギーであり、強度は組織の自由エネルギーの平方根に比例することを見出した。組織の自由エネルギーはその組織が相変態で形成される場合には相変態の駆動力の大きさと一定の関係にある。したがって相変態の駆動力から材料の強度を予測し得る事を思いついた(材料強度熱力学と命名)。そこでまずパ-ライト鋼の変形応力と変態の駆動力の平方根の相関を調べたところ予想どうり非常に高い相関が見出された。得られた相関係数は組織観察から得た因子を基に計算されたものよりもはるかに高いものであった。
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