研究課題
試験研究(B)
TMCP型降伏点460MPaクラスの高強度鋼多層溶接熱影響部の破壊靱性と組織特性の関係について実験的調査を行い、多層溶接熱影響部(HAZ)の破壊靱性は粗粒HAZに含まれる島状マルテンサイトの生成形態に大きく支配されることを明らかとした。すなわち、島状マルテンサイト組織形態は、細長いLathタイプのものと塊状のBlockyタイプのものに大分類できるが、Lathタイプの組織形態の方がBlockyタイプのものに比べて明らかに低い破壊抵抗値を示し、これが多層溶接熱影響部の靱性劣化の主要因であることを見出した。この結果は、マルテンサイト組織形態の制御が溶接熱影響部の破壊靱性向上に有効であることを意味している。また、このようなHAZの組織特性が溶接継手の破壊抵抗にどのように関わるかについて検討するために、HAZに切欠きを有する三点曲げ破壊靱性試験とそれに対する有限要素法解析を行った。それによると、破壊の発生は必ずしも上記の劣化領域から起こるのではなく、き裂先端近傍の強度的不均一が応力・歪特性に大きな影響を与え、強度的不均一によって局部的に応力が高くなることと、溶接熱サイクルで生成する靱性劣化領域の位置関係によって破壊発生限界が決定されることが明らかとなった。これらの成果は、本研究の目指す高靱性HAZの実現のための材料設計アルゴリズムの製作に向けて大きな糸口を与えているといえる。
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