研究分担者 |
鈴木 秀一 住友金属工業(株), 鹿島製鉄所・厚板管理室, 室長(研究者)
長江 守康 日本鋼管(株), 総合材料技術研究所・福山研究所, 課長(研究者)
川端 文丸 川崎製鉄(株), 鉄鋼研究所・厚場・条鋼研究室, 課長(研究者)
萩原 行人 新日本製鉄(株), 大分技術研究部, 部長(研究者)
南 二三吉 大阪大学, 工学部, 助教授 (60135663)
|
研究概要 |
材料の破壊靱性特性と組織形態の関係を基礎的立場から明らかにする目的で,本年度は二相組織鋼を対象として,第二相の強度がマトリックスよりも高い場合とその逆に低い場合について脆性破壊発生特性を調査した。 同一化学組成の60キロ級高強度鋼で熱処理条件のみを変化させ,体積含有率がフェライト70%でマルテンサイト30%の鋼材(フェライト70%鋼と呼ぶ)と,フェライト30%でマルテンサイト70%の鋼材(フェイラト30%鋼と呼ぶ)を作製し実験に供した。その結果,フェライト70%鋼では高強度のマルテンサイト相から脆性き裂が発生していたのに対し,フェライト30%鋼では低強度のフェライト相が脆性き裂の起点となっており,脆性き裂発生特性に明らかな相違が見られた。この原因について有限要素法で検討を加えたところ,各相に生じる応力特性が組織形態によって変化することが大きな役割を果たすことが明らかになった。すなわち,(1)硬質相のマルテンサイトに生じる応力はマルテンサイト含有率が少ない方が大きくなる,(2)軟質相のフェライトの応力はフェライト含有率が少ない方が大きくなる。(1)は,外力の大部分は硬質相のマルテンサイトが支えるが,その含有率が少なくなるとマルテンサイトはより大きな応力を負担する必要が生じるためである。(2)は,軟質相の含有率が少なくなると,軟質相の変形が硬質のマルテンサイトによって拘束され,塑性拘束効果でフェライトの応力が上昇することが原因している。 このような応力特性は,第二相が硬質か軟質かということだけでなく,第二相の形状によっても変化する。本年度の主要結論は次のようである。第二相が硬質相でその脆化が問題となるときには,硬質相を球状にすると硬質相で応力が上昇しにくくなって脆性破壊が発生しにくくなる。また,軟質相での脆性破壊発生が支配的なケースでは,軟質相を第二相とすると軟質相には応力がほとんど流れず,鋼材靱性の低下が防げる。
|