研究分担者 |
鈴木 秀一 住友金属工業(株), 鹿島製鉄所・厚板管理室, 室長(研究者)
長江 守康 日本鋼管(株), 総合材料技術研究所・福山研究所, 課長(研究者)
川端 文丸 川崎製鉄(株), 鉄鋼研究所・厚板・条鋼研究室, 課長(研究者)
萩原 行人 新日本製鉄(株), 鉄鋼研究所, 部長(研究者)
南 二三吉 大阪大学, 工学部, 助教授 (60135663)
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研究概要 |
二相組織鋼を対象として,本年度は,二相組織というミクロな強度不均質のなす働きを破壊靭性というマクロな材料機能にいかにリンクさせるかについてローカルアプローチを適用した手法を展開し,鋼材の脆性破壊性能向上のための不均質形態について考察した。以下に,本研究で得た主な知見をまとめる。 (1)ローカルアプローチで用いるWeibull応力は,破壊発生を支配する組織の破壊駆動力として,材料内の応力分布の微視的様相をマクロな特性としての破壊靭性にリンクする一つの評価ツールとなると考えられる。評価の骨子は,靭性試験片の全体解析で得られるマクロな応力分布を外力条件として,き裂先端領域の微視的不均質を考慮した応力分布を解析し,破壊発生領域を限定してWeibull応力を求めることにある。 (2)強度不均質をもつ二相鋼では,主に硬質相が外力を負担し,硬質相の応力が軟質相の応力よりも高くなる傾向にある。このため,マクロな応力分布から材料の破壊駆動力を評価すると,軟質相が破壊発生を支配する場合には過大評価,硬質相が破壊発生を支配する場合にはかなりの過小評価となる可能性がある。 (3)二相組織鋼の微視的応力特性は,第二相の存在形態の影響を受ける。その代表的な影響因子として,第二相体積率が同じ場合,a)硬質相と軟質相の包含形態,b)硬質相とマトリックスの強度比,c)硬質相の細長化(アスペクト比)がある。a)に関しては,硬質相の応力は硬質相が軟質相に覆われるかその逆かという影響をほとんど受けないが,軟質相の応力は包含形態の影響を大きく受け,軟質相が硬質相に取り囲まれる場合には軟質相の応力負担がかなり小さくなる。b)についてはマトリックスと硬質相の強度差の拡大,c)については硬質相のアスペクト比の増大が硬質相の応力上昇を生み,硬質相の破壊駆動力を大きくする。いずれにせよ,破壊を支配する組織の応力分担率を低下させることが脆性破壊抵抗の向上につながるわけで,構造用鋼の材料設計においては,このような応力分布特性を具現化する不均質形態制御を考える必要がある。
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