|
高分子材料の基本的性質は、分子量によって大きく異なる。しかし、通常、合成高分子は様々な分子量の高分子の混合物として生成し、これまでは、構造形成材料としてそれらがそのままの形で利用されてきた。しかし、次世代の、より高機能・高性能な高分子材料の開発においては、分子量のばらつき(基礎物性のばらつき)は重大な問題となる。申請者らは、金属ポルフィリン錯体が様々なタイプのモノマーのアニオンリビング重合を引き起こし、分子量の揃った多様な高分子を合成できることを見いだした。更に最近、ルイス酸を添加すると重合が著しく加速されることも見い出した。本研究では、求核剤とルイス酸からなる優れた開始剤の実用化を目指すべく、モノマーの適用範囲や重合条件等に関する更なる検討を行い、さらに、高分子に共有結合的に固定化された金属ポルフィリン錯体の分子設計を行ない、回収/再利用可能なはじめてのリビング重合開始剤の開発を目的としている。
本年度は、特に求核剤とルイス酸からなる開始剤の探索を中心に研究を進めた。その中で、求核剤となるポリフィリン錯体のみならず、より安価で工業的にも使用可能、シッフ塩基錯体やフタロシアニン錯体をルイス酸とを組み合わせた開始剤系を用いた場合にも、エポキシドの高速アニオンリビング重合が進行し、分子量が揃ったポリマーが得られることがわかった。さらに、ルイス酸についても種々の検討を重ねた結果、アルミニウムのフェノキシドのほかに、トリフェニルボロンなどのホウ素化合物も有効であることがわかった。また、上記のリビング重合において、工業レベルのモノマをアルミナカラムを通すだけの前処理で用いても、分子量分布の狭いポリマーが得られることを見いだした。
|
