嵩高い置換基を有する有機アルミニウム化合物は、溶液中で単量体として存在し、高いルイス酸性を示すことが知られている。我々は、嵩高い有機アルミニウムと、アンモニウム塩やホスホニウム塩等のオニウム塩を組み合わせた単純な系により、オキセタンやエポキシドの重合が進行し、分子量の揃ったポリマーが得られることを見いだした。その際、オニウム塩とルイス酸から嵩高いアート錯体が生成していることをX線結晶構造解析により確認した。重合はアート錯体のみでは進行せず、重合が進行するためには、オニウム塩に対して過剰量のルイス酸が必須であることが分かった。しかも、オニウム塩に対するルイス酸の量を増やすことにより、生成ポリマーの分子量、及び分子量分布の値を保ったまま、より高速に重合させることが可能であった。このことから、本重合では、フリーのルイス酸がモノマーを活性化し、それに対して嵩高いアート錯体が求核攻撃することにより制御された重合が実現しているものと考えられる(求核種とルイス酸との共同作業)。また最近、我々は求核サイトとルイス酸サイトを同一分子上にもつ多核ルイス酸を設計し、これをオニウム塩と組み合わせた系においては、求核種とルイス酸とのより効率的な共同効果により、重合が加速することを見いだしている。
|