研究概要 |
フラクタル解析による根系解析法の有効性について検討を行った。その結果ある種の植物の根系では,2mm付近のフケ-ルを境に異なるフラクタル次元を有する場合が認められた。小スケールでのフラクタル次元では大スケールでのそれと比較して小さかった。さらに生育段階および遮光処理の影響による両者の挙動は平行的ではなく,対立的であった。種々の根パラメータとこれらの次元との相関を調べた結果,大スケールでのフラクタル次元と根長,根投影面積,トポロジーパラメータとの間に密接な正の相関が認められた。このことから根系は,2mm以上のスケールとそれ以下のスケールとで異なる根系構造を有すると推定された。また、根の生長変化がフラクタル次元に及ぼす影響を調べた結果,フラクタル次元は根の生長速度と密接な関係を有することが示され,根系の生長の良否を判定する指標の一つといて有効であると考えられた。 現地圃場からコアサンプラーによって採取した水稲根系について,その形態と分布を調べた。その結果根のフラクタル次元は採取する土壌深度によって異なっており,日本型水稲では上層で高く下層で低かった。いっぽうインド型水稲ではこの逆であった。さらに各土層を平均した根のフラクタル次元は品種間において差が認められた。また窒素施肥量の違いによって,根のフラクタル次元が変化することが示された。以上のことは,現地から採取した根系の一部をもとに,土壌中での根系の根系構造を定量的に再構築する方法を開発する上で,フラクタル次元が有効なパラメータの一つであることを意味する。
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