研究概要 |
現地水田圃場からコアサンプラーを用いて採取した,異なる品種の水稲不定根の断片(長さ3〜5cm)についてその形態と分布を解析した.その結果,土層別に見た水稲根のフラクタル次元は品種によって特徴的に異なっていた.すなわち株直下では,日本型品種の日本晴とアメリカ型品種のブルーベルにおいて上層よりも下層で根のフラクタル次元が高く,日印交雑品種のアケノホシはこの反対であった.いっぽう株間では,ブルーベルとアケノホシが株直下と同じ傾向なのに対して,日本晴では株直下とは逆に上層で根のフラクタル次元が高くなった.また単位不定根当たりの側根長に関してもフラクタル次元と同様な傾向であった.このことはアメリカ型のブルーベルの根系では上層よりも下層において不側根の発達が盛んであり,日印交雑品種のアケノホシではこの逆に上層の方が側根の発達は良好であり,日本晴ではこの中間であることを示している. これらの品種に加えて,インド型品種のIR8,アメリカ型品種のリモント,グラベリマイネについても調査した.これらの株間における根系の特徴はIR8とグラベリマイネがアケノホシと,ルモントがブルーベルと,それぞれ良く似たフラクタル次元の分布を示した.また単位不定根当たりの側根長も同様であった.これらのことから,インド型品種では土壌の上層において下層よりも側根の発達が相対的に盛んであり,アメリカ型品種ではこれとは逆に下層において側根の発達がより盛んであり,日本型品種ではこの中間であるという作業仮説を作成した.
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