研究概要 |
1.新規切り花鮮度保持剤1,1-ヂメチル-4-(フェニルスルホニル)セミカルバジド(DPSS)の作用機構:DPSSは,スルフォニルウレア(SU)骨格を持つ新規カ-ネーション用切り花鮮度保持剤である.人畜に対して極めて低毒性である. 昨年度に,トマト幼植物においてDPSSがSU除草剤(クロロスルフロン,Chr)の誘導するエチレン生成を阻害することを見いだしたが,今年度は,このDPSSとChrの拮抗作用がカ-ネーション切り花におけるエチレン生成においても見られることを明らかにした.また,DPSSがカ-ネーション花弁の分岐鎖アミノ酸(ロイシン,バリンなど)や糖(スクロース,グルコース,フルクトース)の含量に影響を与えないことを明らかにした.これらの結果から,カ-ネーション花弁には,老化開始時のエチレン生成において重要な役割を果たすSU結合サイトがあり,これに対してDPSSが作用することを考察した.なお,DPSSがACC合成酵素とACC酸化酵素のin vitro活性を阻害しないことを,Plant Growth Regulation Vol.23に発表した. 2.スクロースの鮮度保持作用の仕組み:スクロースの鮮度保持作用は,エチレン生成の開始を送らせることによって発現されることを明らかにした. 3.アブシジン酸(ABA)合成阻害剤(フルリドン,Flu)の鮮度保持効果:カ-ネーション切り花の老化が,ABA処理によって促進され,一方,ABAの合成阻害剤であるFlu処理によって抑制されることを明らかにした.カ-ネーション切り花の老化過程においては,ABAが関与していることが示唆されたので,現在,ABA含量の変化の分析を行っている.
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