研究概要 |
衰退と混迷のなかにある我が国の蚕糸情勢の打開策の一つに、差別化生糸の生産がある、高品位生糸の生産は蚕品種の選抜と製糸法に帰結するが、高品位生糸を吐糸する家蚕品種は、概して飼育に困難で選抜に長期間要す。一方製糸は主は乾繭,煮繭,繰糸,束装の四工程から成り立っているが、なかでも乾繭,煮繭工程はその後の生糸品質に多大の影響を及ぼす。今実験でこの二工程につき検討を行ない、次の成果を得た。 1.110℃、10時間処理という従来の乾繭法に代って,微生物殺滅ガス,エチレンオキサイドガス(EOG)を閉いることで,約15〜20分(室温)処理により殺蛹が可能で生繭としての繭質が保持できること。殺蛹は繭層を容易に通過したEOGが,家蛹の気門より侵競し組織内呼吸の中枢マヒを誘起することにより致孔せしめることを明らかにした。EOGの致孔用量と致死時間による経済的解析は今後の課題とした。 2.EOG処理で得た生繭は、90℃以下の低速繰糸により、解剖率86%,304デニール,1167m以上の繭糸長を有する上繭で、節の少ない強度、伸度、抱合とも乾繭糸に劣らぬ優等生糸であった。繭糸長が若干不足しているが、繰糸条件の検討で解決できる知見を得ており今後の課題とした。 3.簡易型EOFG容器を試作した。試作品はEOG充填量100gとし、本品1本で約30kgの生繭処理が可能として設計した。また30kg生繭処理に要する費用は28円(ガス消費料)と算定された。
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