研究概要 |
本研究の目的は、農耕地生態系への養分元素の流入と流出を定量的に明らかにするとともに、土壌中における養分元素の拡散メカニズムを解析することによって新しい農耕地生態系の管理システム技術を開発、発展させることにある。 1)農耕地生態系への窒素の流入および流出を定量的に明らかにするため、実験フィールドにおいて窒素に関するモニタリング研究を実施した。その結果、施肥窒素の15%に相当する窒素が大気を経由して流入することが明らかになり、大気由来の窒素流入量を考慮に入れた新たな施肥設計、管理システムを構築する必要がある。 2)実験フィールドの地表面下10,30,60,90,120cmの深さに埋設したポーラスカップを用いた負圧自動計測システムおよび4電極センサーを用いた電気伝導度自動計測システムによって、フィールドレベルにおける水分移動およびカリウムイオンの移動を経時的に明らかにしようとした。1.0mo1L^<-1>塩化カリウム溶液650Lをフィールドに負荷させ、カリウムイオンの拡散移動を2ヶ月間にわたって追跡した結果、カリウムイオンは三次元方向に最大120cm移動し、黒ボク表層土と下層土では、拡散移動速度および移動メカニズムの違いが推察された。また黒ボク表層土と下層土の境界面で明瞭な水平方向のカリウムイオンの移動がみられた。 3)実験室内に作製した一次元および二次元土壌モデルにポーラスカップおよび4電極センサーを埋設させ、水分移動およびイオン移動を自動的に計測させた。カリウムイオンの移動は、一次元、二次元方向に実測することができ、カリウムイオン移動の予測が可能となった。 以上の結果から、環境へのインパクトをできる限り小さくした農耕地生態系の新しい管理システムを構築する基礎資料を得ることができた。
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