研究課題
基盤研究(A)
本研究は接合菌類の糸状菌Rhizopus oligosporusの自己溶菌にかかわるキチナーゼ遺伝子を実用植物に組込み発現させることによって有害糸状菌耐性植物の作出を試みたもので植物としてはタバコ、芝、トマト、稲、リンゴなどを計画した。まず我々のグループでその遺伝子を単離した糸状菌R.oligosporusのキチナーゼI遺伝子(chi1)からイントロンとC末端側のプロ配列をコードする部分を除き、カリフラワーモザイクウィルスの35Sプロモーターとノパリン合成酵素遺伝子のタ-ミネーターの間に挟み込んだものをバイナリーベクター系を用いてタバコに導入した。これらを植物体に再生させ自家受粉後植物体に成長させた。ウェスタン解析の結果、目的の蛋白質が生産され、細胞抽出液中のキチナーゼ活性も親株に比べて3-5倍高くなっていることが明らかになった。これらの植物の葉に対して病原性菌類であるSclerotinia sclerotiorum、Botrytis cirereaを接種した結果、親株では菌を接種したディスクの回りに大きな病兆が見られたのに対しキチナーゼ遺伝子導入株においてはほとんどそのような症状は見られなかった。一方、稲についてはトウモロコシのユビキチン遺伝子プロモーターとノパリン合成酵素遺伝子のタ-ミネーターの間にchi1遺伝子を挟んだものをパーティクルガン法を用いて稲に導入した。得られた形質転換体について細胞内でchi1遺伝子産物を生産している株をウエスタン解析により選抜した。これらの株を完全な植物体まで再生させ、イモチ病菌を噴霧接種してその効果について検討したところ、イモチ病菌に耐性化を示す株の数が明らかに増加していた。トマト、リンゴ、芝の系においても現在これらの遺伝子を導入したカルスを植物体に再生させることを試みている。
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