研究概要 |
近年筆者らが単離および遺伝子による一次構造を解析した脱窒光合成細菌Rhodobacter sphaeroides f. s. denitrificansの生産する新規モリブデン酵素ジメチルスルフォキサイド還元酵素(DMSO reductase)の基質選択性を検討したところ、広範な基質に対して還元活性を示し、各種のスルフォキサイド(DMSO,biotin sulfoxide, methionine sulfoxide,各種合成Alkyl aryl sulfoxides)およびN-オキサイド(pyridine N -oxide, picoline N-oxides, nicotinic acid N -oxides, adenosine N-oxideなど)を効率よく還元することがわかった。還元反応は光学活性スルフォキイドについては100%立体選択的に進行し、S-sulfoxideが選択的に還元され、R体が光学純度よく回収される。またAlkyl aryl sulfoxideを用いた反応速度解析ではアルキル側鎖の鎖長およびアリル基の置換様式に対応して、立体選択性に規則性があることを見出した。アルキル側鎖は短いほど,またアリル基の電気陰性度が大きいほど反応速度が大きいことがわかった。 不斉Sulfoxidesを光学純度よく還元し、生成物(あるいは非還元原料)を大量に分取する目的で、生菌を用いた直接還元法を検討した。基質に各種合成Alkyl aryl sulfoxidesを用いたところ、基質の毒性による反応の停止が認められた。そこで菌体を24時間DMSO存在下で培養し、十分にDMSO reductaseを誘導してから基質を加えることによって効果的な還元を行うことができた。ただし、基質の疎水性が高いほど毒性が高く、ある程度の水溶性を持ったもの(methyl phenyl sulfoxide, ethyl phenyl sulfoxideなど)について効果的に還元することができた。今後基質の性質と還元反応性についてさらに検討する必要がある。
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