研究課題
花の赤、紫、青色は、アントシアニンによる。この色素は、pH、共存物質、金属イオンによって変幻にその色を変える。この色素の色調は、pHによって敏感に影響を受ける。本年度は、バラの花弁色調と色素細胞のpHの関係を明らかにするために、直接、生きた色素細胞のpHを測定できる細胞内微小電極(直径1ミクロン以下)法を開発した。バラ花弁の色素細胞は、表層の1層にしか存在していないので、搾汁のpHは色素細胞pHを反映していない。実際、搾汁を絞るとバラ色が紫色に変化する。植物用細胞内微小ガラス電極とpH測定装置は市販されていないので、研究目的に合わせて装置を自作した。植物細胞は内圧が10Kg/cm^2と高く、硬い細胞壁で覆われていることから、細胞を生かしたままでpH測定するにはガラス電極本体の製作がポイントとなり、先端の形状が重要であることが分かった。ガラスの溶解温度とガラス管材質、太さ、引き伸ばす力等多くの条件を検討し、適正な電極の形状を決めた。サザンカの赤花のpHを直接測定することに成功し、色素細胞のpHが3から3.5と極めて強い酸性を示すことを明らかにすることができた。この手法をバラの花のpH測定に適用すべく準備を整えている。バラの赤色色素とヤグルマ菊の青色色素との構造研究から、その発色団が同じシアニジンであり、ヤグルマギクのプロトシアニンはアントシアニン分子が鉄イオンにアントシアニン分子が錯体を形成して青色を呈していることが分かった。このことは、鉄イオンの導入と錯体形成の条件をバラに発現できる遺伝子を導入することができれば青いバラができると考えられる。
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