研究課題
花の赤、紫、青色は、花色素アントシアニンによる、この色素は、pH、金属錯体の形成、共存するコピグメントにより深色化と安定化が起きる。これまでの基礎化学研究で、アントシアニンにより青色花色を発現するには、1)安定な金属錯体の形成、または、2)液胞pHの上昇による安定なアンヒドロ塩基アニオン型の形成のいずれかが不可欠で、いずれも超分子の構築を伴うことがわかった。本年度は、1)からのアプローチとして、変幻自在に花色のかわるアジサイの発色機構の研究を、2)からのアプローチとして、芳香族アシル基転移酵素のクローニング研究を実施した。1)種々の色のアジサイの萼片成分の化学構造と含有量を調べ、色素がいずれもデルフィニジン3-グルコシドシドであること、および、青くなるほどコピグメントのイソクロロゲン酸とAl^<3+>が増加することを明らかにした。次に、アジサイ花色のin vivtro再現実験のために成分の大量調製法を開発した。デルフィニジン3-グルコシドシドは豆種皮より単離できることがわかった。イソクロロゲン酸およびその類縁体は、新たに高選択的化学合成法を開発して得た。構成成分を用いて、緩衝液中で金属イオン存在下で組み合わせ再構成実験を行なった。安定な青色発現にはpH3.5〜4.5で色素と5位にケイヒ酸誘導体の置換したキナ酸、Al^<3+>の3成分の混合することが必須で、コピグメントにクロロゲン酸および類縁体を用いると青色の沈殿となった。青色発色に厳密な構造認識が働くことを見いだした。2)アントシアニンは芳香族酸残基の分子内会合により安定化される。そこで、リンドウ花弁よりヒドロキシケイヒ酸転移酵素を精製し性質を調べた。酵素タンパクは52kDa等電点4.6で,p-クマル酸、コーヒー酸のCo-Aエステルからアントシアニジン3、5-ジグルコシドの5位グルコースヘアシル基を転移させることがわかった。
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