1.完全収着理論式の誘導:食品包材フィルムの種類を限定することなく香気成分の該当フィルムに対する収着挙動を適切に把握するために、まず収着に直接的に影響を及ぼすポリマー物性因子の特定化を図った。すなわち、物性因子としてフィルムの結晶化度、フレキシビリティーを選択し、両パラメーターの収着に対する影響度を測定した。その結果、結晶化度の異なる3種のポリエチレンフィルム(高密度、中密度、低密度ポリエチレン)に対する収着量と収着時に働くエネルギー変化量(Vv[dv^2-dc^2]/RT)の間には比例関係が存在し、結晶化度は収着エネルギーに対して約42%の負の抑制効果を示すことを明らかにした。さらに、フレキシビリティーの指標であるTgと収着量の関係をEVOH(32mol%エチレン含量)フィルムを用いて検討した結果、水分吸着に伴うTgの低下(68℃から-9℃へと低下)に従って香気成分の収着量は増大したが、Tgが一定の場合には収着量は測定温度依存的に減少することが判明した。従って、フィルムのTgが一定とみなされる条件では実際温度とTgとの温度差と収着量との間には何らかの相関関係が成立するものと考察された。 2.表面極性の異なるフィルムの作製:ポリマー特性を変えず、表面極性のみの異なるフィルムを作製することは本研究を遂行する上で重要な課題である。そこで、EVAフィルムに対してメタノールとのエステル交換反応によりOH基を表面限定導入した。その結果、香気成分の収着挙動は表面OH基導入量の増大とともに減少し、リモネンで約60%の低下(OH基量3.46mol%)となった。
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