平成7年度は撹拌型融雪雨量計の試作機の製作とその試験を行った。試作機の設計コンセプトは(1)無雪期の転倒マス型雨量計と同程度の精度がある、(2)日雨量を正確に把握できる、の2点とし、簡単な構造と無電源仕様でそれぞれの精度に適した2つのタイプの試作機を開発した。(1)については溶液型融雪雨量計をベースにし、撹拌器を備えたものを、(2)に対しては貯留式融雪雨量計(水位計を備えた装置)の試作機を1993年に行った予備実験(標高470m)のデータを基に製作した。まず、不凍液の種類や装置の構造などの検討を行った。低温室等で行ったテストの結果より、溶液の決定もかなり重要なポイントになることが判明し、(1)については3種類の溶液型雨量計を、(2)については水位計式貯留型雨量計を芦生演習林の事務所横の気象観測露場(標高360m)においてテストを行った。ヒーター付き雨量計、従来型不凍液、撹拌型不凍液、撹拌型ウィンドワッシャー液、水位計式貯留型の5種類の雨量計を併設して、長期間の稼働試験を行った。その結果、積算降水量が100mm程度を越えると従来型不凍液雨量計には表面に水の層ができて融雪能力が低下し、気温の低い日があれば、水の層は凍ってしまい、その後は観測不能となる。撹拌型雨量計では氷のかけらによって撹拌器が止まることがあったが、順調に観測を続けた。水位計式もほぼ同様に稼働していた。しかし、ヒーター付き雨量計では、積算降水量がかなり少なくなった。これはヒーターの効果により、降雪の一部が蒸発或いは対流によって捕捉されないために生じたものと考えられる。また、降雪強度が30mm/日程度の雪までは上記の2つの撹拌型と水位計式は有効であったが、それ以上の降雪強度及び気温(溶液の温度)・溶液濃度に影響されることは明かで、溶液の量も含めて、今後これらの点を検討し、試験機に改良を加えていく必要がある。
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