研究分担者 |
井ノ口 敏雄 (株)マルトー, 技術企画室, 研究技術顧問
尾形 潔 日立生産技術研究所, 第2部24研, 研究員
小松 輝久 東京大学, 海洋研究所, 助手 (60215390)
中井 泉 東京理科大学, 理学部, 助教授 (90155648)
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研究概要 |
三ヶ年の研究により以下の成果を得ることができた。1.生物試料の作成法の検討:放射光X線分析用の試料ステージに適合する最適な包埋・切断・研磨法について検討したところ,エポキシ樹脂に包埋し,縦断面方向に切断して中心を含む30ミクロン前後の標本を作成すればいことがわかった。さらにこの作業を簡便化し,多試料を短時間で処理できるよう実用化した。2.指標元素の検索:異なる起源の様々な魚種の耳石についてICP発光分光分析を行った結果,Sr,Zn,Fe,Mg,Mn,Alが耳石中に微量成分として含まれていることがわかった。放射光分析により微量元素の耳石中の分布と環境要因の対応関係を検討した結果,環境変動を最もよく反映する指標元素としてSrが最適であることがわかった。3.シンクロトロン放射光分析法の検討:淡水魚と海水魚で濃度差の著しいSrと耳石主成分のCa,微量成分のFeについて,高エネルギー加速器研究機構フォトンファクトリーの放射光蛍光X線マイクロプローブで耳石切断面の2元素分布を明らかにした。Si(111)2結晶モノクロメータでつくった17keVのX線をサンプルに照射したところ,たとえば鉄(平均濃度100ppm程度)の2次元分析ならば,ビームサイズ100x100um2,測定時間10秒/点以下の条件で解析することができた。以上の研究により,蛍光X線イメージング法を耳石に含まれる微量元素の特性化のための新たな手段として確立することができた。4.測定装置の開発:放射光施設のみならず,実験室系でもルーチン的にイメージングを可能にするためX線管球からのMoのX線をグラファイトモノクロメータで単色化する方式を採用して硬組織中の微量成分の2次元分析を行う装置を設計作成した。5.有効性の検討:本研究で開発された放射光分析法の有効性をウナギ,サクラマス,ムネエソの耳石について検討した。各個体の生活履歴が精度よく再現でき,本法が十分に実用に耐えることが明らかになった。
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