土構造物や地盤のパイピングによる破壊(浸透破壊)は、古くからある問題である事例報告は限られている。パイピングの発生メカニズムを明らかにするためには、浸透破壊事例の収集・解析とそれに基づいた原因の究明がかかせない。ここでは、これまでに報告されている精度の高い浸透破壊事例について解析を行い、状況の把握と原因の究明を行った。そして、雑誌報文等にまとめた。さらに新しい事例に関して解析を進めてゆく予定である。 次に、中型二次元浸透破壊実験装置を用いて、琵琶湖砂2について、矢板の長さ、根入れ比を変えた浸透破壊実験を7ケース行った。一回の実験で試料砂を約500kg程度使用するので、たくさんの実験はできないが着実にデータの蓄積を行っている。 浸透破壊現象には、地盤の均質性や異方性等が影響することが知られている。したがって、地盤の浸透破壊現象を実験的に明らかにするためには、前もって作成地盤の特性を把握する必要がある。本年度行った実験地盤についても、まず次のような地盤内浸透流特性を明らかにした:(1)地盤の均質性、(2)地盤の異方性の大きさ、(3)水頭差の増加に伴う地盤形状、等ポテンシャル線分布の変化、(4)変形時水頭差、破壊時水頭差、(5)水中安息角。さらに、実験結果が矢板の根入れ比と限界水頭差の無次元量を用いて無次元化できることを示した。今後、さらに実験を追加・補充してゆく予定である。実験地盤の異方透水性を把握する手法(逆解析手法)について、平成9年度開催「地盤工学における逆解析の適用と施工管理に関するシンポジウム」で発表する予定である。 近年、大規模掘削や大深度掘削においては三次元的な浸透破壊が問題となっており、このような三次元浸透破壊理論が望まれている。ここでは、新たに軸対称地盤の浸透破壊問題に著者らのPrismatic failureの考え方を適用し、新しい理論の構築を進めている。
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