土構造物や地盤のパイピングによる浸透破壊は、古くから存在する問題であるが事例報告は限られている。パイピングの発生メカニズムを明らかにするためには、浸透破壊事例の収集・解析とそれに基づく原因の究明がかかせない。ここでは、これまでに報告されておりデータの整った浸透破壊事例について解析を行い、状況の把握と原因の究明を行い、雑誌報文等にまとめた。今後、さらに新しい事例に関して解析を進めてゆく予定である。 次に、大型二次元浸透破壊実験装置を用いて、琵琶湖砂2について、矢板の長さ、根入れ比、相対密度を変えた浸透破壊実験を8ケース行った。これまでに47ケースの実験を行い本実験装置で予定していた実験はすべて終了した。 浸透破壊現象には、地盤の均質性や異方性が影響することが知られている。したがって、地盤の浸透破壊現象を実験的に明らかにするためには作成地盤の特性を把握する必要がある。本年度行った全ての実験地盤について、まず次のような事象に関して浸透流特性を明らかにした:(1)地盤の均質性、(2)地盤の異方性、(3)水頭差の増加に伴う地盤形状の変化、等ポテンシャル線分布の変化、(4)変形時水頭差、破壊時水頭差、(5)水中安息角。そして、実験結果が矢板の根入れ比と限界水頭差の無次元量を用いて無次元化できること、変形時水頭差が著者らの提案したPrismatic failureの考え方を用いて説明できることを示した。また、地盤の相対密度と浸透破壊特性について考察し、相対密度が破壊形態、変形時水頭差、破壊時水頭差に及ぼす影響について明らかにした。 近年、大規模掘削や大深度掘削においては三次元的な浸透破壊が問題となっており、このような三次元浸透破壊理論が望まれている。ここでは、新たに軸対称地盤の浸透破壊問題に著者らのPrismatic failureの考え方を適用し新しい理論の構築を進めている。
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