パイピングの発生メカニズムとその防止法を明らかにするため、破壊理論の提案、安定解析、ケーススタディーと浸透破壊原因の究明、二次元矢板背後地盤の浸透破壊実験を行い次の事柄を明らかにした。 まず、Harzaの方法、Terzaghiの方法について詳しく考察し、新しい浸透破壊理論Pris matic failure(FrictionとNo friction)を提案した。 次に、上述した3つの安定解析法を用いて3つの典型的な問題(等方性地盤、異方性地盤、二層地盤)について解析を行い、限界プリズムの形状、限界水頭差について考察した。 次に、浸透破壊に関するケーススタディー(5例の解析、3例の記述)を行った。ここで取り扱った浸透破壊事例について破壊の原因を考えると次のようになった。(1)設計ミス、(2)対応ミス、(3)予想もしない事態の発生、(4)不均質地盤、(5)二次元的な浸透流の集中、(6)三次元的な浸透流の集中、(7)異方性地盤、(8)深礎における岩盤の風化、(9)施工中の境界条件の変化、(10)フィルターの目詰まり、(11)メタンガスの発生。 大型二次元浸透破壊実験装置を用いて、琵琶湖砂2について、矢板の長さ、根入れ深さ、相対密度を変えたE0001〜E0047の実験を行った。まず、全ての実験に関して地盤の浸透流特性(均質性や異方性)を明らかにした:(1)地盤の均質性、(2)地盤の異方性、(3)水頭差の増加に伴う地盤形状の変化、等ポテンシャル線分布の変化、(4)変形時水頭差、破壊時水頭差、(5)水中安息角。そして、実験結果が矢板の根入れ比と限界水頭差の無次元量を用いて無次元化できること、変形時水頭差が著者らの提案したPrismatic failureの考え方を用いて説明できることを示した。また、地盤の相対密度と浸透破壊特性について考察し、相対密度が破壊形態、変形時水頭差、破壊時水頭差に及ぼす影響について明らかにした。
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