研究概要 |
自然植生や畑地斜面からの土壌流亡量の予測を目的とした基礎研究である.特に植生の根を含む形態要素の数量化と侵食量に及ぼす影響を調べることを目的としている.前年度の植生斜面の侵食量観測データから,侵食量の大小は地上部の植生の形態のみならず,根茎部の形態が影響を及ぼしていることが予想された. 今年度は根の形態と侵食土量との関係に着目して実験を行った.供試作物は牧草,とうもろこしである.根の形態は複雑であるので数量化する必要がある.写真解析,画像処理を中心に数量化を行った.この結果,根の形態解析では地表部の被覆率の大小よりも地表面近傍の根茎の形態が大きく影響を与える結果がでている.例えば,とうもろこしでは根系面積が地表部の被覆率に対して少ない. 一方,前年度に引き続き,自然降雨による野外の枠試験区において降雨量と侵食量データを記録した.さらに人工降雨装置を用いた模擬裸地斜面での降雨侵食実験のデータの解析も継続中である.10分間降雨量記録より,降雨パターンの統計的特性について解析を行った.これは,高い精度で侵食量予測を目的とするならば,日本のような複雑な降雨形態についてその統計的特性を把握しておく必要があるからである.この結果,土壌侵食を伴わない弱い降雨の10分間降雨強度の確率密度分布は指数分布に従うが,土壌侵食を伴う降雨の場合には指数分布に従わないことがわかった.このような降雨の年間発生率と降雨強度の確率密度分布を調べることが今後の課題である. また,降雨時系列から侵食量を求めるための簡易解析手法の開発を行った.これは,日常,誰しもがデータの整理や解析業務に用いる表計算ソフトで侵食のシミュレーションを容易に行うことを目的にしている.通常のプログラミング言語を用いるよりは簡単にシミュレーションできることがわかった.
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