研究概要 |
家族性慢性難治性疾患であるアトピー性皮膚炎は世界的問題となっているが,その発症メカニズムは未だ解明されず,従って根治療法も確立されていない。本研究は,環境要因によってアトピー性様皮膚炎を自然発症するNCマウスを材料に,皮膚炎発症誘因としての環境因子の解明,皮膚炎病変の形態学的特徴と特異的炎症反応の把握,免疫応答・調節とその特異性の解析,遺伝的素因の解析を実験計画の柱としている。本年度の主たる研究目標は,皮膚病の発現メカニズム,特にIgE産生の引き金と病態との関連性を明らかにし,NCマウスのアトピー性皮膚炎モデルとしての確立を目指すことにある。 1 現在,NCマウスの繁殖・維持は東京農工大学の松田および広島大学の都築の両者によって行なわれているが,本研究に必要なマウス繁殖維持は継続的に可能となった。 2 IgE誘導にはTリンパ球上のCD40リガンドとBリンパ球上CD40結合,さらにIL-4刺激が必要であるが,NCマウスにおいてはCD40-CD40リガンド結合には異常はなく,Bリンパ球のIL-4感受性が著しく高いことが,シグナルトランスダクションレベルからも明らかとなった。さらに,皮膚炎発症マウスでは,いわゆるTh-2サイトカインであり,IgE産生を支持するIL-4,-5,-6などの産生が顕著であることが判明した。 3 ハプテン反復塗布によってSPFNCマウスに,アトピー性皮膚炎に酷似した病態を誘導可能となり,新たな解析モデルを作出できた。高IgE血症を伴うことから,現在,IgEレセプター欠損マウスとの交配により得られたIgEレセプター欠損NCマウスへの本実験システムの応用を試みている。これによって,IgEの病態発現への関与を明確にする直接証拠を得ることができる。
|