研究概要 |
家族性慢性難治性疾患であるアトピー性皮膚炎は世界的問題となっているが,その発症メカニズムは未だ解明されず,従って根治療法も確立されていない。本研究は、環境要因によってアトピー性様皮膚炎を自然発症するNCマウスを材料に,皮膚炎発症誘因としての環境因子の解明,皮膚炎病変の形態学的特徴と特異的炎症反応の把握,免疫応答・調節とその特異性の解析,遺伝的素因の解析を実験計画の柱としている。本年度の主たる研究目標は,NCマウスの安定供給の維持,さらにアトピー性皮膚炎とIgE産生の遺伝的背景を検証するとともに,治療応用の可能性を探ることにある。 1)現在,NCマウスの繁殖・維持は東京農工大学の松田および広島大学の都築の両者によって行われているが,本研究に必要なSPFおよびコンベンショナルマウスの繁殖維持は継続的に可能になった。 2)NCマウスとBALB/cマウスとの交配試験によって,皮膚炎の発症は常染色体上に位置する一つの劣性遺伝子dermによって,さらにIgE産生誘導は常染色体上に位置する二つの劣性遺伝子(ieh1,ieh2)のよって制御されていることが明らかとなった。 3)高IgE産生が皮膚病発現の原因になりうるかどうかをより直接的に証明するために,NCマウスとIgEレセプター欠損マウスとのバッククロス交配を行った結果,IgEレセプター欠損NCマウスの作製に成功した。現在,皮膚炎の発症との関連性を検討中である。 4)皮膚炎発症NCマウスを用いて,免疫抑制剤であるFK506の軟膏連続塗布による皮膚炎の治療効果を調べた結果,塗布後2週間以内に皮膚炎のめざましい治療効果が確認された。
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