研究分担者 |
田部井 豊 農水省, 農業生物資源研究所, 研究員
平井 正志 農水省, 野菜茶業試験場, 研究室長
今西 茂 山形大学, 農学部, 教授 (40007084)
服部 束穂 三重大学, 遺伝子実験施設, 助教授 (10164865)
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研究概要 |
本研究は,遺伝子導入法により植物の受精様式を遺伝的に制御し,自家和合性の植物を自家不和合性に形質転換することにより,従来一部の植物に限定されていたハイブリット種子の生産をより広範な植物に適用するための技術開発を目的としている.トマト野生種Lycopersicon peruvianumは配偶体型自家不和合性を有し,その雌蕊で発現しているリボヌクレアーゼ(S-RNase)が自己花粉管の伸長阻害に関与していることが明らかにされている.本年度は,トマト野生種の花柱cDNAライブラリーからスクリーニングして得たS6とS7-RNaseのcDNAクローンを用いて,センスとアンチセンスcDNAをバイナリーベクターのT-DNA領域に挿入し,栽培種のトマト品種に遺伝子導入を行なった.また,野生種L.peruvianumについても同様な遺伝子導入実験を行なった.これらの遺伝子導入組織から植物体の分化が認められ,現在試験管内培養で生育中である.今後,これら形質転換体について導入遺伝子の発現や自家不和合性形質の変化について調査する予定である.また栽培種のトマト品種において,花柱におけるS-RNase蛋白質の検出を行ない,この花柱蛋白質ではリボヌクレアーゼ活性が低いことを明らかにし,トマト栽培品種が自家和合性であるのはこのためであることが判明した.さらに,トマト栽培品種と自家不和合性のトマト野生種との交配後代における遺伝子分析から,自家和合性個体と不和合性個体の分離が認められ,自家和合性をもたらす遺伝的要因が存在することが示唆された.これらの要因を明らかにするため,トマト栽培品種からS-RNase蛋白質をコードする遺伝子の単離を行ない,その遺伝子の構造解析を現在行なっている.
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