研究概要 |
Mnの吸収に関与する遺伝子を知るために、生育が早くより遺伝解析などが容易であるシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)を用い、生育をそろえるために水耕培養法を確立した。中性子照射したシロイヌナズナ5,000株を正常濃度のMnではMn欠乏症状を示す変異株を得た。それらは野生型のMn含量の凡そ半分しかMnを含んでおらず、典型的なMn欠乏症状を示した。選抜した低Mn株は、高濃度のMnを含む培養液に抽台以前に移すとMn欠乏症状から回復した。欠損遺伝子のTargeted RFLP subtraction法によるマップベースト クローニングを行っている。 トマトをMn欠乏処理すると、高親和性のMn吸収が現れ、同時に金属結合性タンパク質が根形質膜表面に発現することを見出した。N末端フラグメントのアミノ酸配列を参考にしてこの金属結合性タンパク質cDNA(Mdip1)をクローニングした。N末端には27アミノ酸のプレ配列があること、その部分配列をN末端に付加したGUS遺伝子をタバコに導入した形質転換体では、GUSが細胞表面に移行すること、成熟タンパク質のN末端付近に金属結合部位があることを明らかにした。Mdip1はシュウ酸酸化酵素活性を持つことを形質転換植物を作成して確認した。シュウ酸が酸化され生成したH_2O_2はMnO_2に対する還元剤となる。同時にH_2O_2はMn^<2+>の酸化剤ともなるので、、土壌中に放出されるとMn^<2+>の濃度を適当な値に保つ酸化還元バッファーとして働く,Mdip1のMn欠乏による発現と、根からのシュウ酸の分泌が起こればMnO_2は酸化され、生成したMn^<2+>はシュウ酸とのキレート複合体として安定化される、非常に植物にとって好適なMn獲得戦略を持っていることを本実験で明らかにした。
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