研究課題/領域番号 |
07556090
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
木村 光 京都大学, 食糧科学研究所, 教授 (80026541)
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研究分担者 |
井上 善晴 京都大学, 食糧科学研究所, 助教授 (70203263)
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キーワード | Hansenula mrakii / 酢酸イソアミル / 吟醸酒 / アルコールアセチルトランスフェラーゼ / エステラーゼ |
研究概要 |
酢酸イソアミルの合成はアルコールアセチルトランスフェラーゼ(AATFase)においてはイソアミルアルコール(iAmOH)とアセチルCoAから、またエステラーゼではiAmOHと酢酸から合成され、いずれの場合においてもiAmOHが基質となる。AATFaseは一般には熱安定性が極めて低く、また好気培養することにより増加する細胞膜脂質成分中の不飽和脂肪酸により失活することが知られている。昨年度はH.mrakii IFO 0895株が30℃で好気培養しても酢酸イソアミルを合成していることから、本菌においては熱や好気培養に耐性のAATFaseが存在するか、あるいはAATFase以外の酢酸イソアミル合成機構が存在している可能性が示唆された。 そこで本菌の生菌体を用いて、エステラーゼ、あるいはAATFaseによる酢酸イソアミルの合成について検討した。その結果、対数期、定常期いずれの細胞においても、また15℃、30℃いずれの温度で培養した菌体でもエステラーゼの方がAATFaseより多くの酢酸イソアミルを合成した。このことより本菌において酢酸イソアミルの合成にエステラーゼが関与している可能性が示唆された。しかしながら、生菌体を用いる系ではアセチルCoAが菌体中に取り込まれていない可能性が考えられたため、菌体を粉砕し、超遠心によって得た可溶性画分と不溶性画分における酢酸イソアミル合成活性を測定した。その結果、酢酸イソアミル合成を行うエステラーゼは全て可溶性画分に、またAATFase活性は不溶性画分に存在した。AATFaseは不溶性画分から高濃度のTriton X-100によって可溶化されたことから、本菌においてもAATFaseは膜に結合していること、また本菌のAATFaseは酸素に対し耐性を示すことが示唆された。本菌における可溶性画分と不溶性画分による酢酸イソアミル合成能を比較したところ、対数期では約10%、定常期では約20%の酢酸イソアミルがエステラーゼによって合成されていることが明らかとなった。 また、本菌を用い清酒の小仕込試験を行った。官能試験の結果、アルコール度は低いが、果実香のする飲料が得られた。
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