研究概要 |
遺伝子組み替えで創製される新食品の安全利用を検討するために、遺伝子操作で解糖系の酵素活性が強化された酵母の発酵条件下での細胞内毒物レべルの変動を解析した。 まず、解糖系酵素phosphoglucose isomerase (PGI), phosphofructokinase(PFK)及び triosephospate isomerase(TPI)の活性を強化するため、これらの遺伝子をクローニングし多コピーベクターYEpl3に連結した。次いでこれら組み換えたい遺伝子を酵母Saccharomyces cerevisiaeに導入した。 この様にして育種した酵母を発酵工業で用いられるグルコース高濃度の発酵培地で培養し,細胞内部に毒物が蓄積するか否かを検討した。毒物としては、メチルグリオキサールに着目し、実験の対照にはベクターYEp13のみで形質転換した酵母を用いた。 上記の解糖系遺伝子を導入することによって、各酵素活性は対照に比して4-5倍上昇した。その結果、解糖系酵素活性強化酵母では毒物メチルグリオキサールの細胞内含量が数倍上昇した。Amesの変異源性試験法でこの毒物レベルを評価した結果、このレベルは細胞の変異源都なり得るレベルであることが判明した。従って、遺伝子転換酵母を発酵工業に用いるためには、毒物レベルの変動に注意すべきであることが分かった。 この遺伝子転換酵母の安全利用を図る手段として、つまり細胞内部の毒物メチルグリオキサールの蓄積を抑制する手段として、細胞内部のグルタチオン濃度を高めることが有効であることを示した。
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