研究概要 |
アルツハイマー型痴呆症に対するNGF合成促進物質の投与による痴呆症の治療が研究されている。申請者らは主にキノコを中心とした菌類を対象にNGF合成促進物質のスクリーニングを行い,ヤマブシタケからヘリセノンとエリナシンと命名した一連の活性物質を動物以外の生物から初めて発見した。本研究では、ヘリセノン類とエリナシン類,さらに最近得られた数種のキノコ由来の新規活性物質の効率的生産方法の確立とin vivoにおける活性評価と,さらなる新規活性物質の探索を目的とした。 1)活性物質の大量精製,新規活性物質の探索:各キノコをエタノール抽出し,さらに溶媒分画後,クロマトグラフィーを繰り返し,最終的にHPLCによって精製しアッセイ用活性物質を得た。その結果,キヌガサタケ(Dictyophora indusiata)から3種とブナハリタケ(Mycoleptodonoides aitchisinii)から2種の新規活性物質が得られ,構造を明らかにすることができた。ヤマブシタケ菌糸体からも新規なエリナシンが5種得られた。。 2)菌糸体による活性物質の効率的生産:ヤマブシタケ菌糸体の培養条件や菌株を検討した結果,エリナシンAやBの生産効率が大幅に上昇し,量的なエリナシンを確保することが可能になった。同時に中国吉林省生物研究所の協力を得て,中国においても大量培養を行った。 3)活性物質のin vivoにおける評価:得られた活性物質をラットに,腹腔内投与,静脈注射,経口投与などの方法で与え,脳内でのNGF量の定量,末梢神経系への作用をみるための心臓,顎下腺,坐骨神経中でのNGF量の定量などのin vivoの評価が現在進行中である。
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