研究概要 |
アルツハイマー病の治療薬の開発を目指して,ヤマブシタケ(Hericium erinaceum)から得られた神経成長因子(nerve growth factor ; NGF)合成促進物質エリナシン類の効率的生産方法の確立とin vivoでの活性評価と,さらなる新規活性物質の探索を目的として実験を行い,以下の結果を得た。 1.平成7年度に引き続き,各キノコ100-500kgをエタノール抽出し,さらに溶媒分画後,クロマトグラフィーを繰り返し,最終的にHPLCによって精製しアッセイ用活性物質を得た。また,新たな活性物質を求めて,新たに収集したキノコに対するスクリーニングを行い,数種のキノコ抽出物に活性を見いだした。 2.菌糸体による活性物質の効率的生産:平成7年度に引き続き,ヤマブシタケ菌糸体の培養条件や菌株を検討した結果,エリナシンAやBの生産効率がさらに大幅に上昇し,量的なエリナシンを確保することが可能になった。同時に中国吉林省生物研究所の協力を得て,中国においても大量培養を行い,エリナシンAを大量に精製した。 活性物質のin vivoにおける評価:得られた活性物質をラットに,腹腔内投与,静脈注射,経口投与などの方法で与え,脳内でのNGF量の定量,末梢神経系への作用をみるための心臓,顎下腺,坐骨神経中でのNGF量の定量を行った。現在,実験結果を評価中である。 4.NGF合成促進物質の活性発現機構:ヘリセノン類とエリナシン類の活性発現機構について検討を行い,ポジティブコントロールであるエピネフリンはアドレナジックレセプターを介して活性を示すのに対し,ヘリセノンとエリナシンはアドレナリンレセプターのアンタゴニストの共存下でも活性を示したことから,違う作用機構をもっていることを証明した。
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