研究課題/領域番号 |
07556102
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研究種目 |
試験研究(B)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
坂 志朗 京都大学, 農学部, 助教授 (50205697)
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研究分担者 |
柴田 徹 ダイセル化学工業(株), 機能材料・セルロース研究所, 所長
白石 信夫 京都大学, 農学部, 教授 (70026508)
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キーワード | 低純度溶解パルプ / 酢化反応 / 三酢酸セルロース / 三酢酸グルコマンナン / 分子会合体 / 溶解性 / 第三成分添加 / 熱安定性 |
研究概要 |
酢酸セルロースの調製に針葉樹の低純度サルファイト溶解パルプ(α-セルロース含量; 87.5%)を用いると、無水酢酸/酢酸/硫酸の反応系に三酢酸セルロース(CTA)と三酢酸グルコマンナン(GTA)の会合体からなる不溶物が多量に存在するが、ある種の第3成分を反応系に添加すると不溶物が低減することが知られた。特に、ニトロメタン、ジクロロ酢酸添加系での混合比〔第3成分/酢酸=3/7(V/V)〕の反応系で不溶物量が最も低減(1.1%程度)し、反応溶液は高純度溶解パルプ(α-セルロース含量;96.0%)並みに高い透明度を安定に持続した。しかし、ニトロメタンおよびニトロエタンの添加系での混合比〔1/9〕および〔2/8〕の系では一昼夜撹拌中に透過率が低下することが判明した。 得られた酢化物の熱的特性をDSC、DTAおよびTGAで解析した結果、透過率が高く充分溶解した系〔3/7〕からのものは熱安定性が認められ、CTAに特徴的なDSC曲線を示した。一方、混合比〔1/9〕および〔2/8〕の系よりの酢化物は熱安定性が低く、熱分解による吸熱とCTAに由来する情報が重ね合わされたDSC曲線を示た。また、本科学研究費で購入した熱重量質量分析装置により、熱安定性を欠く酢化物からはその熱分解に伴い、導入されたアセチル基が分解し酢酸を遊離することを明らかにした。構成糖分析の結果、これらいずれの酢化物も原料パルプと同程度の高いマンノース含量(6〜9%)を示しており、純度的にはいずれも原料の低純度パルプを反映するものであった。 熱的安定性の高い酢化物は、CTAおよびGTAの完全溶解の結果、沈殿回収に際しただ単に物理的に混合したもので、CTAがCTAとして挙動し結晶化し得るのに対し、熱安定性を欠く酢化物は、CTAとGTAが分子レベルで会合体を形成した形で回収され、CTAがCTAとして結晶化し得ず熱安定性を欠いたものと推察した。これはX線回折図によっても確認し得た。このことは、針葉樹の低純度溶解パルプを用いても、高純度パルプ並みに高透過率を有し、熱安定性に優れた酢酸セルロースが調製できることを示唆さしており、大変興味深い。今後は、現在すでにスタートしている広葉樹の低純度溶解パルプに研究をせ広げ、針葉樹での結果と比較検討していきたい。
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