研究概要 |
本年度は,昨年度に引き続き(1)AE(Acoustic Emission)による蒸散量計測の検討を進めると共に,(2)水質・水量測定結果に基づいた負荷量の推定,(3)室内及び野外における熱・水分移動の解析を個別に展開した.それぞれの概要は以下の通りである. (1)蒸散量計測:針葉樹・広葉樹を供試木として,土壌の関係に反う蒸散量とAEの関係の変化を計測した.土壌が湿潤な間は,両供試木ともAE数と蒸散量に一次回帰的な関係が成立したが,土壌水分が初期しおれ点あるいは毛管連絡切断含水量を下回ると,キャビテーションによるAEの頻発によって先の両者の関係が著しく損なわれることがわかった.逆に見れば,AEの計測は植物の潅漑適期を判断する有効手段にもなり得る可能性を示した. (2)負荷量の推定:造成農地における水質および流出量の計測結果から,水質により流出成分を分離する方法を提案し,タンクモデルによる分離結果と比較した.同時に,流出負荷量についても検討を行った.すなわち,水質情報と水量情報それぞれを独立に扱った解析法を結びつけることにより,従来のLQ式法にみられた高水時の負荷量の過大評価を改善することができた. (3)熱・水分移動解析:室内及び野外に設置した土壌カラム中の水分量,温度,熱フラックスなどを自動計測し,FEMを用いて各種フラックスの変化を解析した.室内実験からは,土壌中に低水分量域が存在しても,熱伝導率の低下を補うような水蒸気フラックスの主成分はそれぞれ液状水移動,熱伝導によることがわかった.また,土壌の含水率の減水量によって,別途測定した蒸発散量が比較的よく説明できることが確認された.
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