研究概要 |
米麦の乾燥工程における省エネルギと除湿乾燥による高品質化を目的として,太陽熱除湿乾燥法の開発を行った。太陽熱で吸湿剤を予め乾燥して太陽エネルギを蓄え,夜間・曇天・雨天時にもこれを除湿エネルギとして利用するソーラーデシカント除湿乾燥法と,太陽光発電による穀物層への送風を併用し,穀物を高品位に保ちながら自然エネルギで乾燥する。この新除湿乾燥システムはガラスハウスを利用した太陽熱除湿乾燥室内に,籾および吸湿剤を通気乾燥できる乾燥機と太陽光発電による内部交互送風装置を備え,平成8年度には換気装置を設置した。吸湿剤には廃棄物を原料とする人工ゼオライトを用い,太陽熱乾燥室近傍には太陽電池モジュールを4枚(129W×4=516W)設置して発電し,一時的にバッテリに蓄えこの電力を用いて換気ファンおよび交互送風装置を駆動した。ガラス室内外部の日射量,大気と乾燥室内各部の温度・湿度は検出され電算機に転送される。 平成8年度には,昼間も通気の内部循環を行いかつ循環空気を低湿度に保つため,電算機で室内空気と大気の平衡水分値とを算出比較することにより換気ファンを制御し,天候条件に対応した2種の実験を行った。第1は晴天昼間に乾燥前半の籾水分の高い状態での乾燥を太陽光で行い,後半は籾とほぼ同質量のデシカント材に貯蔵された除湿エネルギにより夜間や曇天日に乾燥する実験を行った。第2は曇天昼間にデシカント貯蔵エネルギ使用して乾燥前半の籾水分の高い状態での乾燥を行い,初期水分25.5%w.bの籾を18%w.b以下の短期貯留可能な水分まで約1日で低下させる実験を行った。これらの実験で,籾とほぼ同量のデシカント材を用い太陽エネルギを除湿エネルギとして一時貯蔵することにより,一昼夜程度の雨天や夜間・曇天時にも乾燥でき,太陽光発電による交互通風を併用して乾燥むらなく,クリーンな自然エネルギで穀物を乾燥できることが実証できた。
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