サトイモをモデル植物とした。 最初に培養条件を決定した。球茎は、比較的低濃度の糖の存在下でも形成されるので、順化の成功率を指標とした。結果、6%濃度のサッカロースを含む培地中で形成された球茎で最も順化率が高かった。その順化はごく簡単であり、培養終了後洗浄して直ちに土に移植し、直射日光を避けて1週間程度置くだけでよかった。一方、芽数の多さや移植操作のしやすさに注目すると、1〜3%の比較的低濃度の糖を含む培地を用いたほうが良かった。従って、(1)継代維持及び培養装置へ移植する材料の増殖、(2)球茎生産、の2段階からなる増殖方法を採用することにした。現在、この2段階を連続して行った際の増殖効率について観察中である。 培養装置については、最終的な方式や形状を決定するには至っていないが、少なくとも、強制通気を行わなくとも球茎生産が可能であることがわかった。例えば、容量10Lのドラム型培養装置内に目の粗いスポンジでできた内筒を設置し、これに植物体を絡み付かせて培養した場合、装置に直径35mmのシリコ栓をしただけの状態でも、球茎は良好に形成された。この方法でも、耕地10a分の苗を生産するのに10Lの培養装置1台を6週間動かせばよいと試算できた。このような強制通気を必要としない培養方法は、将来の技術の普及にとって特に有利と考えられるので、これを基本にさらに実用的な装置の開発を試みる。 一方、生理的状態の評価については、特に、球茎の形成が始まった時点を特定することが難しく、想定していたような成果は得られていない。今後は、貯蔵蛋白質の生成を球茎形成の指標とする可能性について検討してみる予定である。
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