前年度の結果を受け、通気を必要としない方式の培養装置をより簡略化することを試みた。結果、市販の半透明のプラスチック容器(1リットル容)を加工し、この5本をさらに1本の円筒内に固定して一緒に回転させる方法を考案した。この装置を用いてサトイモ球茎の大量培養を試みた結果、10リットル容の培養槽を用いた場合と同様に、良好な増殖が確認された。しかし、一方で、サトイモ球茎の増殖があまりに活発すぎるため、培養後に分割する操作が煩雑になり、かつ、分割時に強い力がかかることになるために球茎が傷み、順化率に悪影響を及ぼす危険性が予想された。そこで、球茎形成段階にホルモンフリーの培地を用いる、培養槽内に固定化せず常にある種のストレスがかかっている状態におく、などの方法を試みている。また、球茎を肥大させるのではなく、茎(5mm以下)を伸長させ、これを外植片として利用することで、移植操作を単純化し、培養装置内に植物体を均一に分布させることが可能と考え、そのための培養条件の検討を行っている。このほか、培養容器内の構造を変更することによって、ジャガイモの塊茎生産が同様の装置で可能であることもわかった。 これに対し、培養の進行状況や、器官の生理的状態をモニタリングするための指標の探索に関しては難航している。その原因として、基本的に、サトイモ球茎の形成がいつ始まったのかを正確に判定することが難しいという点がある。研究戦略自体の見直しの必要性をも含め、検討する予定である。
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