培養由来のサトイモのタンパク質含量や澱粉含量、および、レクチン様タンパク質量に注目して、これらの貯蔵物質の蓄積量を測定した。結果、これら代表的な貯蔵物質含量は少なく、培養で得られた球茎は貯蔵器官としての成熟度は低いものと推定された。培養物には休眠がなく、培養後は直ちに順化する必要があったので、このことも、貯蔵器官としての未成熟さを示唆しているものと考える。 また、培養物の順化法について検討した。培養物は容易に順化できたが、栽培を続けると枯死する株が徐々に増えた。これは、発根の不良によるものと考えられたので、水処理、IIA処理、および各種抗酸化剤処理による発根促進効果について検討した。結果、いくつかの抗酸化剤に発根促進効果が確認された。この処理は、培養終了後に抗酸化剤入りの水で1週間培養するのみであり、操作も簡単である。また、単に水で培養することにも、発根促進や順化率向上効果があった。なお、水で培養された植物体は、基部組織から取り外しやすくなった。このことは、順化時に植物体を株ごとに分ける時の操作性を高め、かつ、植物体が傷つくことを防止することにも役立つものと期待される。 本研究で実際に利用した培養装置はごく小型であるが、これを多数同時に回転させる培養装置を考案した。 昨年度までの研究結果と以上の結果とを総合して、簡易培養装置を利用した大量培養を中心とする種苗生産体制を構築する可能性が示唆された。
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