研究課題/領域番号 |
07556114
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
高橋 伸一郎 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教授 (00197146)
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研究分担者 |
澤崎 徹 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (00012047)
樋口 広芳 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (10111486)
林 良博 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (90092303)
長谷川 篤彦 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (90011923)
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キーワード | ヒト染色体21 / プリン生合成酵素遺伝子 / 融合遺伝子 / 進化 |
研究概要 |
ヒト21番染色体は医学的見地から重要な染色体と考えられ、現在最も遺伝子構造の解析が進んでいる染色体のひとつである。一方、プリンヌクレオチドの新生経路は、PRPPからIMPに至るまでの10段階の反応からなるが、ヒト21番染色体には、第2段階を触媒するGARS、第3段階を触媒するGART、第5段階を触媒するAIRSの遺伝子が連なって存在している。さらに、これらの遺伝子から、GARS-AIRS-GATR融合酵素が生成することが明らかとなっている。そこで、GARS遺伝子に注目し、この酵素のC末端領域について、霊長類のゲノムDNAをテンプレートとしたPCR解析を行った。まず、GARS-AIRS間のコネクター領域に設計したプライマーを用いてヒト・チンパンジー・ニホンザル・ヒヒのゲノムDNAをPCRしたところ、GARS-AIRS間にイントロンは存在せず、いずれの種でも塩基配列が一致していた。一方、既に明らかとなっているGARS単独タンパク質のcDNA配列をもとにプライマーを設計し、GARS遺伝子の3′末端領域からGARS3′非翻訳領域にかけてPCRを行ったところ、この領域にもイントロンが存在せず、霊長類の狭鼻猿類以上においては、GARSのみをコードする遺伝子とGARS-AIRS-GRATの融合遺伝子が存在することが明らかとなった。さらに、GARS-AIRS-GART遺伝子由来のGARS遺伝子部分の3′末端非翻訳領域とGARSのみの遺伝子の3′末端翻訳領域の塩基配列を比較したところ、前者ではヒト・チンパンジー・ニホンザル・ヒヒのゲノムDNAにおいて塩基配列が完全に一致したのに対して、後者ではヒトに比較してニホンザルで1塩基、ヒヒでは2塩基の置換が観察された。ここまで得られた結果と今回の結果は、GARS-AIRS-GARTの融合遺伝子が、GARSの単独遺伝子が他の遺伝子と進化の過程で融合して形成された可能性を示している。
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