研究概要 |
ヒトと同様に小動物臨床領域においても、肥満は糖尿病や高血圧などいわゆる生活習慣病(成人病)を誘発する最大のリスクファクターである。体脂肪を蓄積している白色脂肪組織での脂肪分解や、エネルギー消費に寄与する褐色脂肪組織での熱産生は、カテコールアミンのβ作用によって活性化される。従って、脂肪細胞に特異的に発現しているβ3アドレナリンレセプターの作動薬は、肥満の予防と治療に有効であると期待できる。昨年度の研究で、齧歯類で有効性が認められたいくつかのβ3作動薬について、ビ-グル犬に対する急性効果を調べ、CL316、243(日本レダリ-)が脂肪分解作用が最も強いことを見いだした。そこで、今年度は、長期投与の効果を調べ、以下の知見を得た。 ビ-グル成犬8頭(体重10-12kg)を群に分け、一方にはCL316,243(0.1mg/kg/day),他にはプラシーボを1日1回、食餌と共に与え、経日的に体重を胴囲を測定した。プラシーボ群に較べて薬物投与群では、体重、胴囲共に低値となり、4週間後に投与群を交替させると逆転した。更に5週間経過した後、組織学的並びに生化学的検索を行ったところ、体脂肪の減少と、褐色脂肪に特異的な熱産生蛋白質であるUCPの多量発現が、mRNAと蛋白質の両者で確認された。また、薬物の投与を中止した後5週間にわたって体重と胴囲を追跡したが、ゆり戻し(rebound)現象が見られなかった。 これらの結果から、イヌに対してβ3作動薬が褐色脂肪組織の増生を伴いながら体脂肪を減少させる、即ち抗肥満効果があることが明らかとなった。
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