研究分担者 |
阿部 広明 東京農工大学, 農学部, 助手 (80222660)
嶋田 透 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教授 (20202111)
伴戸 久徳 北海道大学, 農学部, 助教授 (20189731)
中垣 雅雄 信州大学, 繊維学部, 助教授 (70135169)
宮嶌 成壽 三重大学, 工学部, 教授 (80239409)
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研究概要 |
本年度は,昆虫ウイルスの動態と生態を分子生物学的な手法を用いて解明し,益虫の保護,有害害虫の防除,人畜の感染症の予防,植物の保護などに,直接応用できる診断システムを開発することを目的に,実験を行った。また、カイコのゲノム中に存在するウイルス様DNA塩基配列について,基礎的データをさらに集めた。結果の概要は以下の通りである。 1.蚕糞中の核多角体病ウイルス(NPV)と濃核病ウイルス2型(DNV-2)を,PCR法を用いて同時に検出する方法を開発した。この方法により,養蚕現場での効果的なウイルス病防除が行える可能性が高まった。現在,さらに簡易的なDNA抽出方法について検討し,養蚕現場への応用を試みている。 2.カイコのDNV-2感受性遺伝子(+nsd-2)に連関するランダム増幅多型DNA(RAPD)を2個発見した。さらに組換え実験により,それぞれのRAPDの+nsd-2遺伝子からの遺伝的距離を求めた。 3.カイコの細胞質多角体病ウイルス(CPV)を高感度で検出するための,バイオセンサーの開発を,昨年に引き続き試みた。実用化までには,いくつかの問題を解決しなければならないことが判明した。 4.カイコのゲノム中に存在するウイルス様DNA塩基配列を,新たに数個,発見した。これらの配列は,データベース上の検索から,各種レトロウイルスのゲノム,あるいはレトロトランスポゾンとの相同性が認められた。これらの配列データをもとに,ウイルス様配列の転移機構について推察した。ほとんどのウイルス様配列は,過去に転移したものが,そのままゲノムの中にとどまっており,現在では転移機能を失っていると不活性型と考えられた。しかし一部のレトロトランスポゾン様配列は,胚発生の特定の時期にmRNAに転写されており,活性型である可能性が示唆された。
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