研究概要 |
この研究で製作した深海微生物現場培養装置を、研究船、白鳳丸の航海の際、1996年11月21日に日本海溝域のSt.M-4(38°00.38'N,145°32.22'E,水深5,315m、水温1.1℃)において、各層の流速を測定するための流速計とともセットし、係留を行った。 約9ケ月後の1997年9月2日に回収したが、装置に外見上の破損部分はなく、フレームに取り付けた表層水試料を封入した培養容器も全て回収できた。本装置の強度に関しては全く問題はなかったが、作動に関しては所定の採水量を満足しているものはなかった。残念ながら、回収した8つの容器の内、7つは海水を採取した形跡はなく、投入時に分注した培地のみが入っている状態であった。ただし培地が利用された形跡もなかったため、必要条件であった気密性は保持されていた。唯一、試料番号1の容器には20mlの海水(ZoBell2216培地)が採取されていた。そこで表層水と深層水のZoBell2216E培地のみによる結果ではあるが、以下のようなデータが得られた。 【深層水について】採取時の全菌数は6.0×10^3cells/mlであったが、現場容器では1.1×10^8cells/mlにまで増殖が認められた。採取時の生菌数は2.4×10^<-1>cfu/ml(3℃)、現場容器の試料では常圧においては寒天平板、MPNともどのような条件でも細菌の増殖は認められなかった。しかし、加圧条件(52 MPa)でのMPNは、2.1×10^9cell/mlと非常に高い値を示した。常圧コントロールでは平板培地での生菌数は5.0×10^5cfu/ml(3℃)、MPNは1.1×10^9cell/ml(3℃)と非常に高い値を示した。 【表層水について】採取時の全菌数は2.1×10^5cells/mlであったが、深海に係留後は3.0×10^4cells/mlまで減少した。採取時の生菌数は6.8×10^1cfu/ml(3℃)であった。深海に係留後は、全ての培養条件において細菌の増殖は認められなかった。常圧コントロールの生菌数は3.0×10^7cfu/ml(3℃)、MPNは1.5×10^7cells/ml(3℃)であった。
|