走査型プローブ顕微鏡により細胞構造、特に生体膜の分子レベルでの構造を観察し、併せて構成物質を同定するための新しい超微細構造解析技法を開発することを目的に研究を進め、本年度は以下の成果を得た。 (1)包埋材料の切片を観察するための最適条件の決定 a.包埋剤とエッチング処理の効果の検討:エポキシ樹脂、メタクリーレート樹脂等に包埋した材料の切片により、過沃素酸、過酸化水素による化学的エッチング、イオンボンバードによる物理的エッチングを行い、SPM観察に最適なエッチング条件を調査した。種々の比較の結果、硬度の高いエポキシ樹脂に包埋してダイアモンドナイフによる超薄切片を何等の表面処理を行わずに観察するのが最善であるとの結論に達した。 b.SPMモードの検討:タップモード(DFM)とタッチングモード(AFM)のSPMで切片像の画質を比較した。AFMでは高解像度を得ることができる。しかし生物試料ではカンチレバ-が表面と接触する機会が増して像質の低下が招来された。DFMでは解像度が低下するが良好な質の画像が得られ、細胞像の観察のためにはDFMモードの使用が適切であると判断された。 (2)免疫組織化学法への応用技術の開発 直径20nmのコロイド金を免疫組織化学的に細胞に標識した材料をKFMモードのSPMにより、表面電位の差異としてコロイド金粒子の局在を検出できることが判明した。今後この方法はSPMによる組織化学技法として有力な手段となるものと期待される。 (3)連結試料からのアプローチ a.連結超薄切片を臨界点乾燥法により表面構造を露出させ、SPMにて観察するための示適乾燥条件の設定を行った。 b.凍結割断・エッチングした材料をSPM観察するための装置をメーカーと共同で試作した。平成8年度はこれによる研究が全力を挙げることになると思われる。
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