研究概要 |
近赤外光を用いて,組織中の酸素飽和度(StO2)およびヘモグロビン量(Hbvol)を無侵襲でしかも絶対量を連続記録できる装置(PSA-III N)を開発した.本装置は3波長の近赤外光を組織の表面に交互に照射し,組織内に散乱した光の一部を照射点からある距離をはなれた表面で受光し,その吸光度をもとにLambert-Beerの法則を基に,理論式を導き,組織中のStO2およびHbvolの絶対値を無侵襲で測定するものである.光源には波長 λ1:700nm, λ2:750nm,λ3:830nmのLED光を用いた.PSA-IIINのセンサーは 20×50mmの支持板の端に光源を内臓させ,そこから15mm間隔の中央部に受光器1,さらに10mmの間隔で受光器2を置いた.従って、このセンサーでは、皮膚の表面から深さ15-25mmの組織中の測定が可能である。また,このPSA-IIINの出力をもとに組織酸素消費量(VtO2)の測定も可能にした. 本装置を用いて,ヒトの大腿直筋の運動時のStO2,HbvolおよびVtO2を測定したところ,StO2およびVtO2の運動に伴う変化は,中等度の運動までは負荷強度に比例して変化するが,一定強度以上の負荷に対しては飽和し、変化を示さなかった.これらの運動に伴う局所筋の反応は基本的に体全体の酸素消費量の変化と一致した.これらのことから,今回開発した装置(PSA-IIIN)は組織の酸素動態をみる計測器として,基礎医学では勿論のこと臨床医学においてもその有用性が示唆された。平成8年度は本装置から出力される値の妥当性、および平均光路長の求め方などを詳細に検討して、汎用型の組織酸素動態計測器として完成させる予定である。
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