研究概要 |
平成7年度の研究目的は、β-アミロイド蛋白をラットの脳室内に持続的に注入することによる神経機能の変化を行動薬理学的および神経化学的に検討することであり、以下の研究成果を得た。 1.β-アミロイド蛋白をラットの脳室内に持続的に注入すことにより、学習記憶障害とコリン作動性神経系の機能低下が誘発され、アルツハイマー型痴呆の動物モデルを作製することが可能となった。この動物の学習記憶能を行動薬理学的に検討した結果、受動的回避反応試験や水迷路学習試験などにおいて著明な学習記憶障害が認められた。(Nitta et.al.,Neurosci.Lett.,170,63-66(1994),Nabeshima and Nitta,Tohoku J.Exp.Med.,174,241-249(1994)。 2.β-アミロイド蛋白を持続注入したラットの大脳皮質からのアセチルコリン(ACh)および線条体でのドパミン(DA)の遊離をin vivo brain dialysis法を用いて測定した結果、基礎遊離量には変化が認められなかった。一方、潅流液に高濃度のカリウムあるいはニコチンを添加して神経細胞を刺激した場合のAChおよびDAの遊離の増加が、β-アミロイド蛋白を持続注入したラットでは有意に低下することを見い出した(Itoh et al.,J.Neurochem.,in press(1996))。 3.脳神経細胞の生存は種々の神経栄養因子により支えられている。この中の一つである毛様体神経栄養因子(CNTF)の含量を測定した結果、β-アミロイド蛋白を持続注入したラットでは大脳皮質、海馬および小脳におけるCNTF含有が増加していることを見い出した(Yamada et al.,Neurosci.Lett.,in press(1996))。
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